内容紹介
本書が掲げる「クリティック」は、ふつう「批評」や「批判」という日本語に訳されます。しかし、それらの語では十分に表されない意味が「クリティック」には含まれていることを日本の知的世界は気づかずにきました。その状況を憂える碩学が、これまでの仕事を総括するとともに、将来の知の土台を提供するべく、本書を書き上げました。
「クリティック」とは「物事を判断する場合に何か前提的な吟味を行う」という考え方です。その系譜をたどる道程はホメーロスから開始されます。そこからヘーロドトスとトゥーキュディデースを経てソークラテース、プラトーンに至る古代ギリシャの流れは、キケローやウァッローの古代ローマを経由する形で、一四世紀イタリアのペトラルカ、ヴァッラに至って「人文主義」として開花しました。この流れの根幹にある態度――それは、あるテクストを読み、解釈する前に、それは「正しいテクスト」なのか、そして自分がしているのは「正しい解釈」なのかを問う、というものです。こうした知的態度は古代ギリシャ以来のものであり、のちの者たちはその古代ギリシャ以来の態度に基づいて古代ギリシャのテクストを読み、解釈してきました。そして、それこそがヨーロッパの知的伝統を形作ってきた営みにほかなりません。
この系譜は、近代と呼ばれる時代にデカルトとスピノザによって変奏され、ついには実証主義とロマン主義の分岐を生み出します。その分岐を抱えたまま、現代に至って構造主義と現象学という末裔を出現させました。こうして、古代ギリシャから現代にまで至る流れを「クリティック」を軸にして全面的に書き換えること――そこに浮かび上がる思想史は、まさにその知的伝統から日本が外れているという事実を否応なく突きつけてくるでしょう。この欠如がいかなる現実をもたらしているのか。本書は、現代の危機のありかを暴き、そこから脱出するための道を示して閉じられます。
ここにあるのは、三部作『政治の成立』、『デモクラシーの古典的基礎』、『法存立の歴史的基盤』、日本国憲法を扱う『憲法9条へのカタバシス』、そして話題作『誰のために法は生まれた』など、数々の著作で圧倒的な存在感を示してきた著者からの渾身のメッセージです。
[本書の内容]
第I章 クリティックの起源
1 基礎部分の形成/2 出現/3 混線/4 アンティクアリアニズムのヘゲモニー
第II章 クリティックの展開
1 人文主義/2 ポスト人文主義──クリティックの分裂/3 近代的クリティックの始動/4 近代的クリティックの展開/5 実証主義
第III章 現代の問題状況からクリティック再建へ
1 リチュアリスト/2 社会構造/3 言語/4 現象学/5 パラデイクマの分節/6 構造主義/7 現状の再確認/8 クリティック再建のために
目次
- まえがき
- 第I章 クリティックの起源
- 1 基礎部分の形成
- 2 出 現
- 3 混 線
- 4 アンティクアリアニズムのヘゲモニー
- 第II章 クリティックの展開
- 1 人文主義
- 2 ポスト人文主義──クリティックの分裂
- 3 近代的クリティックの始動
- 4 近代的クリティックの展開
- 5 実証主義
- 第III章 現代の問題状況からクリティック再建へ
- 1 リチュアリスト
- 2 社会構造
- 3 言 語
- 4 現象学
- 5 パラデイクマの分節
- 6 構造主義
- 7 現状の再確認
- 8 クリティック再建のために
- 文献案内
- あとがき
製品情報
製品名 | クリティック再建のために |
---|---|
著者名 | 著:木庭 顕 |
発売日 | 2022年02月10日 |
価格 | 定価:1,815円(本体1,650円) |
ISBN | 978-4-06-527070-7 |
通巻番号 | 759 |
判型 | 四六 |
ページ数 | 240ページ |
シリーズ | 講談社選書メチエ |
関連シリーズ
-
平成転向論 SEALDs 鷲田清一 谷川雁
-
思考の庭のつくりかた はじめての人文学ガイド
-
哲学のすすめ
-
スピノザ 人間の自由の哲学
-
ベルクソンの哲学 生成する実在の肯定
-
現象学の理念
-
我思う、ゆえに我あり デカルトの「方法序説」より
-
劣っていることは資産である アドラーの「個人心理学講義」より
-
プラグマティズム
-
自殺について
-
ツァラトゥストラはかく語りき
-
幸福について
-
スマートな悪 技術と暴力について
-
人格の哲学
-
現代思想入門
-
アルチュセール全哲学
-
デカルト 「われ思う」のは誰か
-
中国思想史
-
方法叙説
-
永遠の平和のために
-
自然真営道
-
言語的思考へ 脱構築と現象学
-
「知の商人」たちのヨーロッパ近代史
-
新視覚新論
-
易学 成立と展開
-
我と汝
-
辞世の作法
-
使える哲学 私たちを駆り立てる五つの欲望はどこから来たのか
-
日本哲学の最前線
-
スウェーデンボルグ
-
はじめてのプラトン 批判と変革の哲学
-
夢と虹の存在論 身体・時間・現実を生きる
-
自然の哲学史
-
フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔
-
Jポップで考える哲学
-
晩年のカント
-
ヴァレリー 芸術と身体の哲学
-
超解読! はじめてのヘーゲル『法の哲学』
-
古代哲学史
-
現代民主主義 思想と歴史
-
はじめてのスピノザ 自由へのエチカ
-
自由意志の向こう側 決定論をめぐる哲学史
-
イソクラテスの修辞学校
-
哲学者ディオゲネス 世界市民の原像
-
プロティノス「美について」
-
語りえぬものを語る
-
「人間以後」の哲学 人新世を生きる
-
ドゥルーズとガタリの『哲学とは何か』を精読する
-
ローマの哲人 セネカの言葉
-
笑いの哲学
-
空想から科学へ―社会主義の発展―
-
贈与の系譜学
-
ミシェル・フーコー
-
暗黒の啓蒙書
-
ペルシア人の手紙
-
ルイ・ボナパルトのブリュメール18日
-
レヴィナス 「顔」と形而上学のはざまで
-
全体性と無限
-
「心の哲学」批判序説
-
詩としての哲学 ニーチェ・ハイデッガー・ローティ
-
子どものための哲学対話
-
名前の哲学
-
心にとって時間とは何か
-
西田幾多郎の哲学=絶対無の場所とは何か
-
現代の哲学
-
新しい哲学の教科書 現代実在論入門
-
「私」は脳ではない 21世紀のための精神の哲学
-
愛
-
資本主義に出口はあるか
-
解読 ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
-
箴言集
-
物質と記憶
-
技術とは何だろうか 三つの講演
-
創造と狂気の歴史 プラトンからドゥルーズまで
-
神とは何か 哲学としてのキリスト教
-
言語と行為
-
天然知能
-
なぜ世界は存在しないのか
-
小学生のための正書法辞典
-
なぜ私は一続きの私であるのか
-
カントの「悪」論
-
「あなた」の哲学
-
哲学の練習問題
-
ラカンの哲学
-
「東洋」哲学の根本問題
-
哲学の最新キーワードを読む 「私」と社会をつなぐ知
-
三つの革命
-
リュシス・恋がたき
-
モンテーニュの書斎
-
「死ぬのが怖い」とはどういうことか
-
ゼノン 4つの逆理
-
ヨハネス・コメニウス
-
死に至る病
-
哲学塾授業 難解書物の読み解き方
-
アルキビアデス クレイトポン
-
読む哲学事典
-
法哲学入門
-
愉しい学問
-
スピノザの世界
-
科学の解釈学
-
デリダ 脱構築と正義
-
九鬼周造
-
論理学
-
来たるべき内部観測
-
差別感情の哲学
-
美学
-
哲学する心
-
精読 アレント『全体主義の起源』
-
ドイツ観念論 カント・フィヒテ・シェリング・ヘーゲル
-
弁証法とイロニー 戦前の日本哲学
-
闘うための哲学書
-
〈弱さ〉のちから ホスピタブルな光景
-
デカルト、ホッブズ、スピノザ 哲学する十七世紀
-
デカルト形而上学の成立
-
マックス・ウェーバーを読む
-
ハンナ・アレント
-
デカルト哲学
-
わたしの哲学入門
-
ベルクソン=時間と空間の哲学
-
まんが 哲学入門――生きるって何だろう?
-
フッサール 起源への哲学
-
古代ギリシアの精神
-
純粋理性批判
-
生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想
-
世界史の哲学講義
-
イマジネール 想像力の現象学的心理学
-
分析哲学入門
-
モンテーニュ よく生き、よく死ぬために
-
幸福の哲学 アドラー×古代ギリシアの智恵
-
哲学者たちのワンダーランド 様相の十七世紀
-
あるようにあり、なるようになる
-
哲学な日々
-
心という難問
-
「不思議の国のアリス」の分析哲学
-
内乱の政治哲学
-
中学生の君におくる哲学
-
ヘーゲルを総理大臣に!
-
西洋の哲学・東洋の思想
-
哲学入門一歩前-モノからコトヘ
-
ラカンの精神分析
-
哲学の謎
-
〈子ども〉のための哲学
-
新しいヘーゲル
-
ゲーデルの哲学
-
私・今・そして神
-
道徳を基礎づける
-
ハイデガ-入門
-
ヘーゲル「精神現象学」入門
-
アリストテレス「哲学のすすめ」
-
デカルト=哲学のすすめ
-
解体新書
-
ソクラテスの弁明・クリトン
-
ソクラテス以前の哲学者
-
西洋哲学史
-
哲学以前
-
超解読! はじめてのフッサール『現象学の理念』
-
精神の哲学・肉体の哲学 形而上学的思考から自然的思考へ
-
超解読! はじめてのヘーゲル『精神現象学』
-
対話の哲学 ドイツ・ユダヤ思想の隠れた系譜
-
ヘ-ゲル『精神現象学』入門
-
欲望論
-
アリストテレスの人生相談
-
キェルケゴールの日記 哲学と信仰のあいだ
-
生き方と哲学
-
哲学で解くニッポンの難問
-
哲学の基礎
-
ソクラテスと朝食を 日常生活を哲学する
-
知ること、黙すること、遣り過ごすこと 存在と愛の哲学
-
情緒と創造
-
事典・哲学の木
-
お茶席の冒険
-
反哲学史
-
哲学の教科書
-
哲学の歴史
-
ニーチェとの対話 ツァラトゥストラ私評
-
バカロレア幸福論 フランスの高校生に学ぶ哲学的思考のレッスン