内容紹介
幕末の混乱の中で皇位に就いた16歳の少年は、伊藤博文ら元勲たちと信頼関係を結び、「建国の父祖」の一員へと成長していった。京都を離れて江戸城跡に新宮殿を構え、近代憲法に存在を規定された天皇の政治への意志とは。復古の象徴、神道の主宰者でありながら、髷を切り、軍服を着た「欧化」の体現者。洋装の皇后とともに巡幸と御真影でその姿を見せ続け、国民国家の形成期に「万国対峙」を追求した「我らの大帝」の実像を描く。
講談社創業100周年記年企画として刊行され、高い評価を得たシリーズの学術文庫版、第7巻。本巻では、明治天皇から大正天皇まで、近代国家建設期における天皇の役割を検証する。
「王政復古の大号令」の夜、小御所会議で「幼冲の天子」と揶揄された16歳の少年は、その後、伊藤博文ら元勲たちと信頼関係を結び、「建国の父祖」の一員として自ら重要な決断を下していく。幕末の混乱のなかで皇位につき、現実政治の厳しさに直面した若き天皇は、いかに鍛えられ、成長していったのか。生身の政治家としての成長を追う。
また、京都の公家社会を離れて東京にうつり、新たに「宮中」を創設した明治天皇は、最初の「東京の天皇」であり、復古の象徴であると同時に、欧化の体現者でもあった。和風建築でありながら、儀礼の空間は洋風に装飾された明治宮殿。国学的な尊王論に支えられた神道の主宰者ながら、髷を切り、西洋料理を食した天皇は、歴史上初めて、「憲法」というものによってその地位を規定された存在であった。
そして、明治以前の天皇が、決して人々の前に姿を見せなかったのに対し、明治天皇は全国への巡幸や「御真影」で国内外にその存在をアピールしていく。洋装の皇后も天皇とともに姿を見せ、慈善活動や女子教育に新たな役割を見出す。西南戦争を経て、国会開設から日清・日露戦争へと向う国民国家建設の時代は、この国に住む人々に「我らの天皇」という意識が生まれてきた時代だった。[原本:『天皇の歴史07巻 明治天皇の大日本帝国』講談社 2011年刊]
目次
- 序章 欧化と復古を生きた「大帝」
- 第一章 小御所会議の「幼冲の天子」
- 第二章 京都の天皇から東京の天皇へ
- 第三章 明治憲法と天皇
- 第四章 立憲君主としての決断
- 第五章 万国対峙の達成
- 終章 君主の成長と近代国家
製品情報
製品名 | 天皇の歴史7 明治天皇の大日本帝国 |
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著者名 | 著:西川 誠 |
発売日 | 2018年06月11日 |
価格 | 定価 : 本体1,230円(税別) |
ISBN | 978-4-06-511851-1 |
通巻番号 | 2487 |
判型 | A6 |
ページ数 | 392ページ |
シリーズ | 講談社学術文庫 |
初出 | 本書の原本は、2011年7月、小社より単行本として刊行されました。 |
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