内容紹介
今年7月、大阪府の「百舌鳥・古市古墳群」が日本で23件目のユネスコ世界遺産に指定された。しかし、この世界遺産を構成する古墳の多くは、その被葬者さえ特定されていない。最大規模を誇る仁徳天皇陵や、履中天皇陵、允恭天皇陵などには、本当にその天皇が眠っているのだろうか。天皇陵は、いつ、どのように定められ、管理されているのか、近世・近代史を専門とする著者が、「天皇陵の歴史」と問題点を解き明かす。
江戸時代後期、各地の古墳を独自に探査した蒲生君平。幕末期、尊王思想の高まりの中で、陵墓の比定と修補を願い出た宇都宮の藩主・戸田忠至。こうした近世の研究成果の上で、明治政府は、全天皇と皇族の陵墓を決定していった。神話に語られる天皇の実在を「証明」するためにも、墓の確定は欠かせなかったからである。神武天皇陵や仁徳天皇陵はどのように決められたのか、明治天皇陵はなぜ京都にあるのか、大正天皇陵の参拝に大混雑した鉄道と町、昭和初年に新たに皇統に列せられた南朝第3代の長慶天皇の陵はどう探したのか、さらに天皇陵の祭祀の場としての意味、著者が発見した資料「陵墓参考地一覧」からわかること――など、あらゆる論点から天皇陵を検証し、今後の科学的・考古学的調査の必要性を訴える。
〔原本:『天皇陵論―聖域か文化財か―』 新人物往来社、2007年刊〕
目次
- はじめに―天皇陵と宮内庁
- 第一章 創られた天皇陵
- 1 江戸時代の姿
- 2 文久の修陵
- 3 神武天皇陵はどこに
- 第二章 天皇陵決定法
- 1 仁徳天皇陵の探しかた
- 2 決定陵と未定陵
- 3 聖徳太子墓の謎
- 4 明治天皇陵の謎
- 5 「皇室陵墓令」と大正天皇陵
- 6 長慶天皇陵を探せ
- 第三章 天皇陵の改定・解除
- 1 天武・持統天皇陵の改定
- 2 豊城入彦命墓のゆくえ
- 第四章 天皇による祭祀
- 1 祭祀の真相
- 2 式年祭とは
- 第五章 もうひとつの天皇陵
- 1 昭和二十四年十月『陵墓参考地一覧』の発見
- 2 安徳天皇陵と陵墓参考地
- 3 陵墓参考地の断面
- 第六章 聖域か文化財か
- 1 陵墓と文化財
- 2 天皇陵研究法
- おわりに―「聖域」としての天皇陵
製品情報
製品名 | 天皇陵 「聖域」の歴史学 |
---|---|
著者名 | 著:外池 昇 |
発売日 | 2019年10月12日 |
価格 | 定価 : 本体1,230円(税別) |
ISBN | 978-4-06-517393-0 |
通巻番号 | 2585 |
判型 | A6 |
ページ数 | 336ページ |
シリーズ | 講談社学術文庫 |
初出 | 本書は、2007年、新人物往来社より刊行された『天皇陵論――聖域か文化財か』を改題し、加筆して文庫化したものです。 |
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