内容紹介
明治20年から15年間、東京帝国大学で教鞭をとった著者による、日本回想録。ルートヴィッヒ・リースは、ベルリン大学でランケに師事し、実証的な歴史学の方法を日本に伝えたことから、「日本近代歴史学の父」とされる。その内容は、大津事件や日露戦争勃発などさまざまな社会的事件に関する見聞、日本の政治家や軍人らの人物像、旧武士身分の封建的体質への批判から、一般家庭の生活、迷信や伝統行事など多岐にわたる。
明治20年(1887)から明治35年まで、東京帝国大学で教鞭をとったドイツ人学者による、日本回想録。著者のルートヴィッヒ・リースは、ベルリン大学で近代歴史学の祖・ランケに師事し、厳密な史料批判に基づく実証的な歴史学の方法を日本に伝えたことから、「日本近代歴史学の父」とされる。
本書は、リースがドイツのさまざまな新聞や雑誌に寄稿した文章を集成し、明治35年(1905)に全2巻で刊行したAllerlei aus japan(ふつうは『日本雑記』と訳される)の全6章のうち、特に滞日中の出来事などを記した第4章までを翻訳したものである。
内容は、明治24年に来日したロシア皇太子が襲撃され、日本中が震撼した大津事件から、明治37年の日露戦争勃発にいたるさまざまな社会的事件に関する見聞と論評、日本の政治家や軍人、元老らの人物像や個性、天皇を戴いた新たな国家体制の分析、「大和魂」や旧武士身分の封建的体質への批判から、一般家庭の生活ぶり、宗教や迷信、伝統行事など多岐にわたる。その描写は、ドイツの一般大衆に向けて、のびやかにかつ率直に意見を述べたもので、リース自身、「わが生涯におけるもっとも美しい時代を過ごした不思議な国を偲ぶよすがとなってくれよう」と前書きに語っている。
巻末に、史学史研究者・関幸彦氏(日本大学教授)の解説。
〔1988年、新人物往来社刊の同名書籍の文庫化〕
目次
- 第一章 国家と政治
- ロシア皇太子襲撃事件/日露戦争の本質/元老会議/大本営の戦争指導者たち/貴族の役割/サムライの地位/大和魂あるいは勇猛果敢さ/戦時と平時における兵隊/軍艦建造と海軍/反ロシア運動の急先鋒/日英同盟締結/ヴァルダーゼー伯爵の日本訪問
- 第二章 文化と精神基盤
- 日本の文化発展における一つの欠点/浜田彦蔵/異彩を放つ日本人たち/新聞と新聞記者/日本の格闘技/迷信と宗教/文明の進歩と武士道の復活
- 第三章 家庭生活と経済
- ある日本家庭での一日/濃尾地方の大地震/京都の国内博覧会/東京の大火/台湾島の樟脳栽培
- 第四章 日本の歳事
- 皇后主催の観菊会/正月点景/祖先の霊を迎える日/端午の節句
- 訳者あとがき
- 解説 (関幸彦)
製品情報
製品名 | ドイツ歴史学者の天皇国家観 |
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著者名 | 著:ルートヴィッヒ・リース 訳:原 潔 訳:永岡 敦 |
発売日 | 2015年07月11日 |
価格 | 定価 : 本体880円(税別) |
ISBN | 978-4-06-292305-7 |
通巻番号 | 2305 |
判型 | A6 |
ページ数 | 256ページ |
シリーズ | 講談社学術文庫 |
初出 | 本書の原本は、1988年に新人物往来社より刊行されました。 |
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