内容紹介
仏教の原典を求めて、1900年当時厳重な鎖国をしていたチベットに、困難を乗り越えて、単身入国・帰国を果たした河口慧海師の旅行記です。最高の旅行記かつ、生活・風俗・習慣の的確な記録として、チベット研究の第一級の基本文献です。『西蔵旅行記』(1904、博文館)を底本とし、挿絵も全点収録しています。また、改訂版(1940年)と英訳本(1909年)も参照し、完全な形になっています。
仏教の原典を求めて、1900年当時厳重な鎖国をしていたチベットに、身に降りかかるさまざまな困難を乗り越えて、単身入国・帰国を果たした河口慧海師の旅行記です。
旅行記としてのおもしろさも第一級ですが、チベットの生活・風俗・習慣の的確な記録となっており、チベット研究の第一級の基本文献にもなっています。
チベット行を決心してから日本を出立するまでの準備。カルカッタ(コルコタ)での語学や物品の調達を経て、ヒマラヤに分け入ります。寒さ、盗賊、野生動物、厳しい地形、国境越えの苦労などを乗り越え何とかチベットに入国。厳重な警備の目をくぐり抜け、チベット第二の都市シカチェからラサへの道中。ラサに潜入した慧海は、チベット人を名乗り、医者として薬などを処方し、大活躍。ついには、法王に召されその盛名がますます高くなります。ラサの生活やチベット外交にも詳しくなります。しかしついに、素性が露顕しそうになり、チベット脱出を決意します。貴重な資料を持ち、幾重にも張り巡らされた関門を奇跡的にくぐり抜け、英領インドに到着し、日本へ帰国するまでの波瀾万丈の旅の記録です。
本書は、『西蔵旅行記』(1904、博文館)を底本とし、ノーカット版で、挿絵も全点収録しています。また、改訂版(1940年)と英訳本(1909年)も参照し、より完全な形になっています。学術文庫の五巻本を上下二巻本に再構成して刊行しました。
目次
- 凡例
- チベット人の誓言
- 僧侶の目的
- 婚姻
- 送嫁の奇習
- 多夫一妻
- 晒し者と拷問
- 刑罰の種類
- 驚くべき葬儀
- 奇怪なる妙薬
- チベット探検者
- 鎖国の原因
- 不潔の都
- 旧教と新教
- 法王の選定
- 子供の選択
- 教育と種族
- 豪族と最下族
- 教育の奨励法
- チベットの物産
- 輸出入品と商売
- 貨幣と版木
- 願文会
- 法王政府
- 婦人の風俗
- 婦人と産児
- 児女と病人
- 迷信と園遊
- 舞踏
- チベットとロシア
- チベットと英領インド
- 輿論
- 清国とチベット
- ネパールの外交
- チベット外交の将来
- モンラムの祭典
- 投秘剣会
- チベットの財政
- チベットの兵制
- チベット宗教の将来
- 秘密露顕の端緒
- 商隊長の秘密漏洩
- チベット退去の意を決す
- 恩人の義烈
- 出発準備
- 出発の準備整う
- いよいよラサを出ず
- ゲンパラの絶頂
- 山路を辿って第三の都会に入る
- いよいよ関所に近づく
- 五重の関門
- 第一の関門
- 第一関門を通過す
- 途上の絶景と兵隊町
- 無事四関門を通過す
- いよいよ五重の関門を通過す
- チベットに別る
- 荷物の延着、途中の滞留
- ダージリンに旧師と再会す
- 疑獄事件
- 救解の方策
- 大谷、井上、藤井三氏の切諫
- 奥中将を軍営に訪う
- 日本軍営の応対
- ネパール国王に謁す
- 護衛平氏の腕力
- 首府カトマンズに向う
- 国王代理に会う
- 獄裡の友を懐う
- 大王殿下の詰問
- 再び宮殿に伺候す
- ようやく目的を達す
- 龍樹菩薩坐禅の巌窟
- 故山に帰る(大団円)
- あとがき 終わりよければすべてよし
- 地図
- 解説
製品情報
製品名 | チベット旅行記(下) |
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著者名 | 著:河口 慧海 |
発売日 | 2015年02月11日 |
価格 | 定価 : 本体1,490円(税別) |
ISBN | 978-4-06-292279-1 |
通巻番号 | 2279 |
判型 | A6 |
ページ数 | 512ページ |
シリーズ | 講談社学術文庫 |
初出 | 本書は、川口慧海『チベット旅行記』(講談社学術文庫 全五巻)を上下巻に再構成したものです。再構成にあたり、"Three Years in Tibet"(1909)の最終章を訳出し、「終わりよければすべてよし」として収録しました。 |