内容紹介
『宝慶記』は、若き道元禅師(1200~1253)が仏道を究めんと南宋に渡り、燃えたぎるような情熱をほとばらせて、正師たる長翁如浄禅師(1162~1227)に拝問(古徳先哲に対して言葉や文章をもって丁重に質問すること)した求道の記録です。それはまた、道元の問いに真摯に答えた如浄という老古仏が、正伝の仏法である只管打坐の世界を道元に嗣続せしめんとした、まことに慈悲深い慈誨の記録でもあります。
道元は、南宋の宝慶元年(1225)5月1日から同三年(1227)の、おそらくは7月上旬、日本に帰国するために如浄の下を乞暇(禅林を下山するために暇を乞うこと)するまでの間、天童山の方丈で如浄に拝問したところと、それに対する師の慈誨とを、その都度記録しました。いわば、『宝慶記』は、道元が如浄に随身した「随聞記」であり、日中の枠を超越した師弟の問答が、阿吽の呼吸の中に展開されているのです。
対話という性格上、『宝慶記』には道元の肉声がより強く響きわたっています。修行とはなにか、仏法とはなにかについて具体的な内容となっています。古来、中国に渡った日本僧たちの記録は多くありますが、真実の仏法を求め、これほど師と弟子の間で目の当たりに相対して(これを面授といいます)真剣に交わされた記録はありません。道元の数ある著作のなかで、われわれ凡夫にとってもっとも親しみやすいのが本書です。大谷氏の精緻な訳注で、八百年の時空を超え禅の奥義が伝わってきます。
目次
- 1 如浄禅師に随時参問を懇願する
- 2 教外別伝の真意とは何か
- 3 思慮分別を無視した払拳棒喝は正しいか
- 4 冷暖を自ら知ることは正覚か
- 5 初心修行者の心得とは何か
- 6 『楞厳経』と『円覚経』は仏祖道か
- 7 三障(煩悩障・異熟障・業障等)は仏祖の説か
- 8 因果の道理をどのように信ずべきか
- 9 長髪や長爪は僧侶の風儀か
- 10 汝古貌あり、深山幽谷に居し、仏祖の聖胎を長養すべし
- 11 裙袴の腰〓の結びかたについて
- 12 緩歩の仕方について
- 13 ものの本質は三性(善性・悪性・無記性)に関わるか
- 14 仏祖の大道をなぜ禅宗と呼ぶのか
- 15 参禅は身心脱落である
- 16 三時業(順現報受業・順次生受業・順後次受業)の道理とは何か
- 17 『了義経』とはどのような経か
- 18 感応道交とはどのようなことか
- 19 仏祖の道と教家の談は別のものか
- 20 文殊と阿難の結集の違いは何か
- 21 椅子の上で襪子を著ける方法について
- 22 坐禅の時、胡菰を食べてはならない
- 23 坐禅は風の当たるところでしてはならない
- 24 一息半趺の経行の方法について
- 25 褊衫と直〓について
- 26 華美な袈裟を著けない理由について
- 27 迦葉尊者が金襴の袈裟を伝授されたのはいつか
- 28 禅院こそが正法を正伝していると思うが如何か
- 29 只管打坐こそが六蓋を除く
- 30 華美な法衣を著けないのはなぜか
- 31 仏祖の身心脱落は柔軟心である
- 32 法堂の師子像と蓮華蓋について
- 33 「風鈴頌」について
- 34 全ての衆生は諸仏の子
- 35 坐禅時の調身法について
- 36 坐禅を難ずることへの対処について
- 37 坐禅は頭燃を救って弁道すべし
- 38 坐禅は帰家穏坐、今年六十五歳
- 39 坐禅は正身端坐すべし
- 40 坐禅時の経行の方法について
- 41 坐禅時の経行は釈尊の聖跡を敬い行うべし
- 42 坐禅時、心を左の掌に置くのが仏祖正伝の法である
- 43 正伝の仏法を託するのは、まさに汝である
- 44 初心後心の得道も仏祖正伝の宗旨である
製品情報
製品名 | 道元「宝慶記」 全訳注 |
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著者名 | 訳:大谷 哲夫 |
発売日 | 2017年08月10日 |
価格 | 定価 : 本体1,310円(税別) |
ISBN | 978-4-06-292443-6 |
通巻番号 | 2443 |
判型 | A6 |
ページ数 | 384ページ |
シリーズ | 講談社学術文庫 |
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