内容紹介
歴史を彩る「英雄」は、どのように語り継がれ、創作され、人々の記憶と歴史認識のなかに定着してきたのだろうか。特に、政争や戦乱の敗者が伝説を介し、復活し、再生する過程を、中世から近世、近代への長いスパンでたどっていく。その「蘇り方」は決して直線的ではなく、多くの屈折と虚像を伴うが、その道筋を追うことが、新しい歴史学の楽しみとなる。
たとえば、安倍晴明のライバル蘆屋道満や、酒呑童子退治の坂田金時ら、実在の疑わしい英雄は、歴史のなかでどのようにリアリティーを吹き込まれていったのだろうか。
そして、平将門や菅原道真らの怨念への畏怖が語らせる「敗者の復活」。坂上田村麻呂や藤原利仁、源頼光に託された、「武威の来歴」の物語。鎮西八郎為朝や源義経が、西国や東北、さらに大陸へと伝説を拡大させた「異域の射程」。本書はこれらを三つの柱とし、伝説のなかに中世史の再発見を試みる。江戸の浄瑠璃や歌舞伎、往来物から、近代の国定教科書まで、伝説の変貌の過程から「歴史の語られ方」を豊かに汲み上げる。〔原本:『蘇る中世の英雄たち――「武威の来歴」を問う』中公新書、1998年〕
目次
- はしがき
- 第一章 再生する英雄たち――江戸のなかの中世
- 第二章 道真と将門――敗者の復活
- 第三章 田村麻呂と頼光――武威の来歴
- 第四章 為朝と義経――異域の射程
- 第五章 伝説の記憶――歴史観の祖型
- あとがき
- 付録 軍記作品のなかの武人伝説・説話
製品情報
製品名 | 英雄伝説の日本史 |
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著者名 | 著:関 幸彦 |
発売日 | 2019年12月12日 |
価格 | 定価 : 本体920円(税別) |
ISBN | 978-4-06-518205-5 |
通巻番号 | 2592 |
判型 | A6 |
ページ数 | 224ページ |
シリーズ | 講談社学術文庫 |
初出 | 本書は、1998年に中央公論社より刊行された『蘇る中世の英雄たち――「武威の来歴」を問う』を、文庫化にあたり改題したものです。 |
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