「日月めぐる」既刊・関連作品一覧

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日月めぐる

美しき渦に巻き込まれた男女の行方――
「だったら、ずっとここにいたらいいのに」
江戸末期、駿河の小藩に流れゆく時、川、そして人。名手が丹念に紡いだ珠玉の7篇。

「ほんとうに、吸い込まれてしまいそうだ。両側に迫った山のせいで狭まった流れを、ごつごつした岩がなおもさえぎろうとしている。さえぎられてたまるかと、川の水は怒ったように飛沫を噴き上げ、ぬれそぼった黒い岩に挑みかかる。けれど、いがみ合っているだけではなかった。ここには調和があった。薄青と紺と藍と紫苑と群青と縹色と裏葉色と御納戸色と浅葱色と、そしてかがやく紺碧……水にかかわるありとあらゆる色の濃淡が、きらめく陽光と溶け合って、渦という摩訶不思議な世界を創り出している。」――<本文より>