「生き仏になった落ちこぼれ」既刊・関連作品一覧
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感動・必読のノンフィクション大作
なぜかくも荒行に挑むのか
死臭ただよう「堂入り」、死に装束を身にまとい、自害用の剣を身にたずさえての「回峰行」――生と死の交錯する極限のドラマを活写。
「現代の生き仏」――とたたえられる酒井雄哉大阿閣梨。師はなぜ仏門に入ったのか。予科練で迎えた敗戦、ラーメン屋、旋盤工など職を転々と変え、新妻は自殺。人間失格ともいえる青春――。39歳のとき比叡山に登り、仏門に入る。「捨身苦行」を志し、「千日回峰」に入る。「生き葬式」といわれる、不眠・不臥・断食・断水の9日間の「堂入り」をはじめ、凄絶な荒行に挑み、7年の歳月をかけて満行。史上2人を数えるのみの2千日回峰も達成。――師の半生を通し、日本人の生き方を問う感動の話題作。
壮絶な行のありさまを今、酒井阿閣梨が話す。
「3日すぎて4日目ごろから死のにおいがしてきたっていうね。そのうちに点々と死斑があらわれてきたのがわかった。しかしお経を唱えるのが大変なの。量が多くて。だから睡魔などは入りこむすきはなく、かえって感覚は異様に冴えわたってくる。自分の体内からすべてよごれたものが浄化されて、体全体が透明になっていくというか、そんな感じだね。そりゃ実際は朦朧(もうろう)としているんだろうけども、線香の灰がゆっくりと落ちて、それが粉々にくだけるさまが、まるでスローモーションのようにはっきり見えて、そのくだける音まで聞こえるんだ」
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