内容紹介
1冊の本には、たくさんの記憶がまとわりついている。その本を買った書店の光景、その本を読んだ場所に流れていた音楽、そしてその本について語り合った友人……。そんな書物をめぐる記憶のネットワークが交錯することで、よりきめ細かく、より豊かなものになることを伝えるため、二人の著者が相手に触発されつつ交互に書き連ねた16のエッセイ。人文書の衰退、人文学の危機が自明視される世の中に贈る、情熱にあふれる1冊!
1冊の書物には、それが大切な本であればあるほど、たくさんの記憶がまとわりついている。その本を買った書店の光景、その本を読んだ場所に流れていた音楽、そしてその本について語り合った友人……。そんな記憶のネットワークが積み重なり、他の人たちのネットワークと絡み合っていくにつれて、書物という経験は、よりきめ細やかで、より豊かなものになっていく──。
本書は、そんな書物をめぐる記憶のネットワークを伝えるために、二人の著者がみずからの経験に基づいて書いたものです。ただし、これは「対談」でも「往復書簡」でもありません。
キーワードは「観念連合」。ある考えやアイデアが別の考えやアイデアに結びつくことを示す言葉です。一人が1冊の本をめぐる記憶や考えを書く。それを読んだ相手は、その話に触発されて自分の中に生じた観念連合に導かれて新たなストーリーを綴る。そして、それを読んだ相手は……というように、本書は「連歌」のように織りなされた全16回のエッセイで構成されています。
取り上げられるのは「人文書」を中心とする100冊を越える書物たち。話題がどこに向かっていくのか分からないまま交互に書き継がれていったエッセイでは、人文書と出会った1990年代のこと、その後の四半世紀に起きた日本や世界の変化、思想や哲学をめぐる現在の状況……さまざまな話が語られ、個々の出来事と結びついた書物の数々が取り上げられています。本書を読む進めていくかたたちにも、ご自分の観念連合を触発されて、新たなネットワークを交錯させていってほしい。そんな願いを抱きながら、人文書の衰退、人文学の危機が自明視される世の中に、二人の著者が情熱をそそいだこの稀有な1冊をお届けします。
目次
- まえがき(互 盛央)
- 幻想に過ぎないはダメ
- 言語から出発する
- 暇と退屈の問題に出会う
- 書物は何のために?
- 単に国家権力を批判するのではなく
- 「分かりやすさ」の罠
- 弱い言葉
- 余白を消去してはならない
- いつもそばにあったけれども読んでいなかった
- 人文書は何に抗うのか?
- 実存主義と人文学
- 人文学の真髄
- 総合的方法に魅せられた者たち
- 精神のリレー
- 作品と物語
- 「原点」に立つこと
- あとがき(國分功一郎)
関連シリーズ
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ルネサンスの神秘思想
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ヒューマニズム考 人間であること
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虹の理論
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東方的
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精霊の王
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フィロソフィア・ヤポニカ
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靖献遺言
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ヘーゲルを越えるヘーゲル
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科学者と世界平和
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京都学派
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丸山眞男の憂鬱
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アーレント 最後の言葉
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共同体のかたち イメージと人々の存在をめぐって
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革命論集
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ブルジョワ 近代経済人の精神史
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パスカル『パンセ』を楽しむ
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エスの系譜 沈黙の西洋思想史
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易、風水、暦、養生、処世 東アジアの宇宙観(コスモロジー)
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怪物的思考
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儒教と中国 「二千年の正統思想」の起源
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「社会」の誕生 トクヴィル、デュルケーム、ベルクソンの社会思
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桃源郷――中国の楽園思想
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ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想
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岡本太郎という思想
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「教養」とは何か
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実在とは何か
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人間的自由の条件 ヘーゲルとポストモダン思想
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日本的なもの、ヨーロッパ的なもの
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〈主体〉のゆくえ-日本近代思想史への一視角
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三人称の哲学 生の政治と非人称の思想
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〈弱さ〉と〈抵抗〉の近代国学
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近代政治の脱構築 共同体・免疫・生政治
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リヴァイアサン
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生きていることの科学
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自由とは何か
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倫理という力
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無限論の教室
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日本の風景・西欧の景観 そして造景の時代