2009年10月から刊行を開始し、この4月に全4巻が完結した『大系 黒澤明』。
編者・浜野保樹東大教授の長年の調査による、黒澤自身が書いた・発言したすべての文字データを網羅した「世界のクロサワ」生誕百年にふさわしい企画と好評を得た。
その間、これまで読むことが出来なかった、あるいは存在すら知られていなかった脚本が多数発見された。
全集完結につづく別巻は、映画ファン、黒澤ファンがあっと驚く脚本を10本収録する。
そのなかから3本をご紹介する。
「陽気な工場」は、黒澤が日本放送教会(現NHK)のために書き下ろしたラジオドラマ。
昭和17年8月15日に放送されたが、これまでどんな黒澤研究書にも言及されたことがなかった。
戦時下にどんな作品を書いていたか。
「明日を創る人々」の個人蔵脚本。
昭和21年5月2日公開の、東宝撮影所の組合が自主制作した一種のプロパガンダ映画。
黒澤がメガホンをとっているが、終生自作とは認めず、公開後は近代美術館フィルムセンターで1回上映されたのみの幻の映画。
昭和26年、映画雑誌にもその10月封切予定、主演は三船敏郎、志村喬と紹介されたが、大映に製作を拒否された「棺桶丸の船長」の準備稿として、橋本忍がまとめていた「棺桶丸の人々」が発見された。
これ以外の収録作品は以下の通り。
「静かなり」/「森の千一夜」/「サンパギタの花」/「天晴れ一心太助」/「どっこい!この槍」/「能の美」/完成した『夢』から外された三つのエピソード
【著者略歴】
黒澤明(クロサワアキラ)
1910年~1998年
浜野保樹(ハマノヤスキ)
東京大学大学院教授。
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