江戸を遊ぶ──。タイムスリップした中年男と小粋な芸者の物語。
地面を見詰めて江戸を透視しながら歩いて行った洋介は、間もなく〈定点〉に達すると、その場所に足を止めて、両方の世界を素早く見廻した。どちらにも、洋介を見ることのできる位置には、誰一人見当たらなかった。江戸側にじっと目を凝らして、向こうの景色が急にはっきり見え始めた瞬間、洋介は一気に160年の時間を〈跳〉んだ。何の抵抗もなく、体は、江戸に移った。頭の上におおいかぶさっていたようなビルが姿を消し、空が急に広くなった。──本文より
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