戦後、リアリズム至上の伝統歌壇に激震を起した前衛歌人の中でも歌と評論両輪の異才で光芒を放つカリスマ塚本邦雄。非在の境に虚の美を幻視する塚本は自らの詩的血脈を遡行、心灼かれた唯一の存在として宿敵・藤原定家を見出す。選び抜いた秀歌100首に逐語訳を排した散文詞と評釈を対置、言葉を刃に真剣勝負を挑む「定家百首」に加え、『雪月花』から藤原良経の項を抄録。塚本邦雄の真髄を表す2評論。
“愛しかつ憎んだ”宿敵定家に挑む
戦後、リアリズム至上の伝統歌壇に激震を起した前衛歌人の中でも歌と評論両輪の異才で光芒を放つカリスマ塚本邦雄。非在の境に虚の美を幻視する塚本は自らの詩的血脈を遡行、心灼かれた唯一の存在として宿敵・藤原定家を見出す。選び抜いた秀歌100首に逐語訳を排した散文詞と評釈を対置、言葉を刃に真剣勝負を挑む「定家百首」に加え、『雪月花』から藤原良経の項を抄録。塚本邦雄の真髄を表す2評論。
島内景二
繰り返し、言おう。邦雄の定家論は、由紀夫を含む滔々たる戦後文学の一大潮流の中で把握すべきである。龍彦もまた、然り。不可勝数の芸術家たちが群星のように燃えさかり、昼の太陽光線よりも赫く夜空を焦がした。彼らは異端・鬼才などと呼ばれたが、由紀夫という正統派の天才をマスコミの前面に押し立て、自分たちこそが芸術の正統だと高唱した。それが昭和40年代の空気だった。――<「解説」より>
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