俳句に関する考察の全貌を示す名著
<自己の文学観の最も大切な部分を折口信夫から受けている>と語った山本健吉が、現代文学を基軸にして古典文学を探求。俳句固有の性格や方法を明確にする一方「日本の詩の歴史」のうち、俳句が占める位置を示して複眼的な批評を展開、文学の根本問題に迫る。表題作のほか「挨拶と滑稽」「純粋俳句」「芭蕉と現代」「時評的俳句論」など著者の俳句・俳諧についての考察を網羅した名著。
山本健吉
俳句は短歌の上の句を独立させた詩型であり、完結詩型を中断することによって、作為的に成立せしめられた詩型である。短歌が、それ自身で完全に抒情詩としての性格を具え、一定の時間的持続のうちに詩的律動をうち出すことができるのに対して、五・七・五の俳句詩型になると、そこに質的変化が起り、そのような時間的性格から背馳しようとする傾向が認められる。――<本文より>
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