「小林秀雄全文芸時評集」既刊・関連作品一覧
知性のドラマを批評へとたかめ近代を拓いた新しい文芸時評
懸賞評論「様々なる意匠」二席入選の翌年(昭和五年)、「アシルと亀の子」で、文芸時評家として文壇に登場した小林秀雄。当時隆盛を極めたマルクス主義文学の観念性を衝き、また心理小説、私小説、行動主義等、あらゆる文学潮流にも与することなく、孤高を持し、本質的で独創的な論を展開。そこには個々の作品を論じつつも、批評という行為それ自体を問う、<近代批評>誕生のドラマがあった。
小林秀雄
文学という形はその影をもっている。瞬時も同じ格好をしていない人間の心という影をもっている。作品という死物に、命を与える人間の心は、社会の鏡でもなければ、又、社会は人間の心の鏡でもないのである。文学に関する困難は、ただこの影の世界を覗くにある。――<本書収録「文学と風潮」より>
※本集は、掲載紙誌において「文芸時評」「文芸月評」と銘打たれた作品を集成したものです。底本は、新潮社刊『小林秀雄全作品』1~5(二〇〇二年十月~二〇〇三年二月)としました。
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