「亡き母や」既刊・関連作品一覧
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遠い記憶のなか満開の櫻の下に母がゐる 処女作から六十年 傘寿をこえて ゆかりの人を尋ね 辿り直した母の生涯
風格とおかしみのある自在の筆で描く傑作連作長篇
齢とるにつれ、自分の癇癪持ちで短気な、場合によつて火のついたやうになる性癖が、独自の個性でも何でもなく、単に亡母の遺伝子をそつくり受け継いでゐるだけのことではないかと、段々さう思ふやうになつて来た。とろくさいのが嫌ひ、べとべとするのが嫌ひ、「つめたい」とか「情緒に欠ける」とか、周りの者から時々非難されるけれど、割り切れるものははつきり割り切つて置きたい方で、その点も母と私と似てゐる。――(本文より)