「手もちの時間」既刊・関連作品一覧
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●暮しを見つめる最新随筆集68篇
過ぎた時の折々の想いと懐しい風景
手もちの時間を彩るあれこれ
それにしても、昔は寒かった。母の手にはつま切れがきれ、私の耳や手には霜やけがたえなかった。夜廻りの拍子木がカチ、カチ、カチカチと音を刻んで近付いてくる。家の角から横町に向って、火の用心と声を掛けて又、遠退いてゆく。しみじみ外の寒さが思われる。刺子の半纏を羽織っても拍子木を持つ手はつめたかろう。寒さが寂しさに感じられるときであった。──本文より
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