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帰りたかった家

書下ろし長篇エッセイ『小石川の家』続篇

父の死は、母には安堵感、私には悲しさを残した。あの雪の夕暮れから五年の歳月は、母にどんな苛酷な生活をさせたか、その切っ掛けを作ったのは私であり、父の優柔不断な生活と結核という病気であった。祖父の言う弱即悪愚即悪はそれを正確に指摘し、どんな言いわけも出来ない。離婚という再び逢うことのない手続き以外に方法は無かったのだ。――本文より