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過ぎる十七の春

3月。直樹と典子兄妹は、従兄弟(いとこ)の隆の家を訪れた。ここは、木蓮(もくれん)や馬酔木(あせび)や海棠(かいどう)や空木(うつぎ)などに埋(うず)もれた野草の里。まさに桃源郷(とうげんきょう)だ。しかし、久方ぶりに会う隆の目は昏(くら)かった。そして、心やさしい隆が母親に冷酷な態度をとるのは何故?母子に、いったい何が!?「あの女が、迎えにくる……」隆は、幼い日の冷たい雨の夜を思い出し、直樹には、あの記憶が甦る。17歳──少年たち(ふたり)を繋(つな)ぐ運命の春が来た。