内容紹介
シリーズの最初の巻「古代篇」では、〈世界史〉の中のミステリー中のミステリー、イエス・ キリストの殺害が、中心的な主題となる。もし、〈世界史〉の中で、われわれの現在に最も大きな影響を残した、たった一つの出来事を選ぶことが求められれば、誰もが、迷うことなく、イエス・キリストの十字架上の死を挙げることになるだろう。
どうして、イエス・キリストは殺されたのか? どうして、たった一人の男の死が、これほどまでに深く、広い帰結をもたらすことになったのか? われわれの現在を、社会学的な基礎において捉えるならば、それは「近代社会」として規定されることになる。近代化とは、細部を削ぎ落として言ってしまえば、西洋出自の概念や制度がグローバル・スタンダードになった時代である。その「西洋」の文明的なアイデンティティは、キリスト教にこそある。とすれば、キリストの死の残響は、二千年後の現在でも、まったく衰えることなく届いていることになる。キリストの死は、どうして、これほどの衝撃力をもったのだろうか?
イエス・キリストは、わけのわからない罪状によって処刑された。その死は、今日のわれわれのあり方を深く規定している。必ずしもクリスチャンではないものも含めて、その死の影響の下にある。どうしてこんなことになったのか?……
(「まえがき」より)
目次
- まえがき
- 第1章 普遍性をめぐる問い
- 第2章 神=人の殺害
- 第3章 救済としての苦難
- 第4章 人の子は来たれり
- 第5章 悪魔としてのキリスト
- 第6章 ともにいて苦悩する神
- 第7章 これは悲劇か、喜劇か
- 第8章 もうひとつの刑死
- 第9章 民主主義の挫折と哲学の始まり
- 第10章 観の宗教
- 第11章 闘いとしての神
- 第12章 予言からパレーシアへ
- 第13章 調和の生と獣のごとき生
- 第14章 ホモ・サケルの二つの形象
- 文庫版あとがき
製品情報
製品名 | 〈世界史〉の哲学 1 古代篇 |
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著者名 | 著:大澤 真幸 |
発売日 | 2022年04月11日 |
価格 | 定価:2,530円(本体2,300円) |
ISBN | 978-4-06-527683-9 |
判型 | A6変型 |
ページ数 | 416ページ |
シリーズ | 講談社文芸文庫 |
初出 | 本書は、『〈世界史〉の哲学 古代篇』(2011年9月、小社刊)を底本とし、ルビ等を多少調整しました。また、文庫化にあたり、「〈世界史〉の哲学」シリーズとして通巻番号を付しています。なお、初出は「群像」2009年2月号~2010年4月号(2009年4月号をのぞく)です。 |