日本近代の百年の心象風景を、故郷の土俗的背景と遡行する歴史的展望において捉え、戦後世代の切実な体験を文学的形象として結晶化した傑作(『万延元年のフットボール』)。「いまや『洪水』が目前にせまっているという声は、一般的となっている。その時、想像力的に同時代を生きなおす、ということは現実的にはいみがあるであろう」(著者・『洪水はわが魂に及び』) 【収録作品】 万延元年のフットボール(1967年) 洪水はわが魂に及び(1973年) ──ノーベル賞受賞をもたらした作品ほか
エンタメ小説進化論 “今”が読める作品案内
円堂 都司昭
大江健三郎全小説 第4巻
大江 健三郎,鈴木成一デザイン室
歌麿『画本虫撰』『百千鳥狂歌合』『潮干のつと』
喜多川 歌麿,菊池 庸介
白山の水 鏡花をめぐる
川村 二郎
小林秀雄対話集
小林 秀雄
安部公房とわたし
山口 果林
凡庸な芸術家の肖像 上 マクシム・デュ・カン論
蓮實 重彦
ラノベのなかの現代日本 ポップ/ぼっち/ノスタルジア
波戸岡 景太
考えるよろこび
江藤 淳
東と西 横光利一の旅愁
関川 夏央
今日よりもマシな明日 文学芸能論
矢野 利裕
戦後詩 ユリシーズの不在
寺山 修司
大江健三郎(おおえけんざぶろう)1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。
大江健三郎全小説全解説