内容紹介
日常生活のさまざまな場面で体験する「痛み」。痛みは、生きていくうえでの防御機能のため、警告の役割もしています。私たちが受ける刺激は、皮膚下の侵害受容器を活性化させ、感覚神経を通って脊髄に伝わり、大脳で痛みとして認識されます。体内で起きている「痛み」のメカニズムを解説します。
痛覚には、熱いものに触れたとき、反射的に手を引っ込めるという単純なパターンの「感覚的な側面」と、不安、恐怖、過去の記憶などの影響を受ける「情動・感情的な側面」の二面性があります。痛覚の感覚的な側面は、生物がもつ基本的な警告反応の1つで、種の保存、生命の維持に不可欠な機能です。一方、痛覚の情動・感情的な側面は、さまざまなパターンがあります。
私たちが受ける刺激は、皮膚の下の侵害受容器を活性化させ、感覚神経を通って脊髄に伝わり、大脳で痛みとして認識されます。誰もが日常生活のさまざまな場面で体験する「痛み」のメカニズムを解説していきます。
第1章では、慢性痛を抱えるすべての読者に関係する「痛みを理解するうえでの基礎的知識と現状」をわかりやすく説明されてます。第2章では、「痛みがどのように生じ、脊髄に伝えられるのか」という感覚面について詳しく説明されています。第3章は「痛みの中枢はどこにあるのか」「痛みはなぜ主観的なのか」という痛みの根源的な問題である感情面に踏み込んでいます。最近着目されているデフォルトモードネットワークやマインドワンダリングと痛みの意識の関係についても言及されています。第4章は「痛みはなぜ増強し、持続するのだろうか」という問題について、脳の神経回路の可塑性と痛みの記憶という観点で説明されています。第5章では、痛みの治療の進歩と痛みとの付き合い方について述べられています。
分子から行動にいたる脳科学そのものである痛覚のメカニズムを、わかりやすく解説しています。
目次
- 第1章 痛いとはどういうことだろう
- 1.1 だれもが体験し、これからも経験する痛み
- 1.2 痛みを理解するための基礎的知識
- 1.3 痛みを認識する大脳
- 1.4 痛みは主観-痛みは測れない
- 第2章 痛みはどのように生じ、脊髄に伝えられるのだろう
- 2.1 激辛料理を食べるとなぜ汗が出るのだろう-熱の受容器
- 2.2 どうして卵をつぶさずに握れるのだろう-機械的な受容器
- 2.3 腹痛はどのように生じるのだろう-化学的な受容器
- 2.4 痛みはどのように神経線維を伝わるのだろう
- 2.5 痛みはどのように脊髄に伝えられるのだろう
- 第3章 痛みの中枢はどこにあるのだろう
- 3.1 痛みは脊髄から脳にどのように伝えられるのだろう
- 3.2 痛みの中枢はどこにあるのだろう
- 3.3 痛みはなぜ主観的なのだろう
- 第4章 なぜ痛みは増強し、持続するのだろう
- 4.1 なぜ痛覚過敏反応は生じるのだろう-皮膚での末梢性感作
- 4.2 痛みはなぜ持続するのだろう-脊髄での中枢性感作
- 4.3 なぜ触刺激が痛み(アロディニア)に変わるのだろうか
- 4.4 痛みはチャネル病
- 第5章 痛みの治療はどこまで進んでいるのだろう
- 5.1 着目する痛みの治療薬・治療法の紹介
- 5.2 高齢社会における痛みの治療
製品情報
製品名 | 痛覚のふしぎ 脳で感知する痛みのメカニズム |
---|---|
著者名 | 著:伊藤 誠二 |
発売日 | 2017年03月15日 |
価格 | 定価 : 本体920円(税別) |
ISBN | 978-4-06-502007-4 |
通巻番号 | 2007 |
判型 | 新書 |
ページ数 | 224ページ |
シリーズ | ブルーバックス |
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