大切な恋を失い、生きる気力さえなくしていたさみこ。ある時、アボカドの種の水栽培を始める。白い根が伸び、葉が出て……ここから、彼女の“蘇生の物語”が始まる。古びたアパートの個性的な住人たちや編み物教室の仲間たちとの交流。そして、仕事の編み物にうち込んでいくうちに、彼女の心の中に光が射し込み始める。静謐で美しい文章が、日常の中のかけがえのないものを描き出す。著者初の長編小説。第146回芥川賞候補作。