内容紹介
近代日本の歴史学は、江戸期の漢学の流れと、国学・水戸学の流れ、そこに洋学が結合し、摩擦しながら、「新しい日本の自画像」を描くべく成立した。鎖国下の平賀源内や荻生徂徠、明治期の福沢諭吉、森鴎外らの歴史観、ドイツから来日したリースの働きなどから、「国史」誕生の経過を描く。さらに、久米邦武筆禍事件、南北朝正閏論争など、「天皇制」との軋轢のなかで近代歴史学が挫折し、鍛えられていく過程をたどる。
日本の近代歴史学の成立事情とその背景のドラマを、おもな歴史学上の事件と人物を中心に描き出す。
明治時代とは、江戸期の知的遺産と、急速に流入した西欧の学問が出会った時代だった。歴史学に関していえば、江戸期以来の漢学、特に朱子学の流れと、国学・水戸学の流れ、そこに洋学が結合し、あるいは摩擦を起こしながら、「新しい日本の自画像」を描くべく、「歴史学」が成立し、さらに「国体史観」を形成していったのである。
本書では、鎖国下の平賀源内や林羅山、荻生徂徠らの歴史認識から、明治期の福沢諭吉、森鴎外らの歴史観、実証史学の移植に寄与したドイツの歴史家・リースの働きなどをみながら、「国史」誕生の経過をたどる。
さらに、久米邦武筆禍事件、喜田貞吉と南北朝正閏論争など、「天皇制」との軋轢のなかで近代歴史学が挫折し、あるいは鍛えられていく過程をみていく。
日本の歴史学の成り立ちをあらためて整理し、現代も問われ続けている、「国家」と「歴史研究」との緊張関係という問題を考察する手掛かりとなる好著。
〔原本:『ミカドの国の歴史学』新人物往来社 1994年刊〕
目次
- 序 出会った歴史──「近代」と「中世」
- 第一章 「ガリヴァー」の遺産──近代史学のルーツ
- 1 江戸の中の西洋
- 2 江戸期の考証学
- 3 近代史学の界隈へ
- 第二章 「ミカドの国」の周辺──近代明治の学問事情
- 1 開化期の史学事情
- 2 文明史からの解放
- 第三章 「カイザーの国」の歴史学──西欧史学の移植
- 1「欧羅巴」史学の履歴書
- 2 リースと「史学会」
- 3 リースが見た「日本」
- 第四章 「ミカドの国」の歴史学──久米事件とその周辺
- 1 久米邦武筆禍事件
- 2「ミカドの国」の輪郭
- 3 久米事件の源流
- 第五章 「ミカド」から「天皇」へ──喜田事件とその周辺
- 1 南北朝正閏論争
- 2 南北朝問題の源流
- 3「ミカドの国」の終焉
- あとがき
製品情報
製品名 | 「国史」の誕生 ミカドの国の歴史学 |
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著者名 | 著:関 幸彦 |
発売日 | 2014年07月11日 |
価格 | 定価 : 本体960円(税別) |
ISBN | 978-4-06-292247-0 |
通巻番号 | 2247 |
判型 | A6 |
ページ数 | 240ページ |
シリーズ | 講談社学術文庫 |
初出 | 1994年に新人物往来社より刊行された「ミカドの国の歴史学」を、文庫化にあたり改題したもの。 |