内容紹介
二十世紀後半の混沌たる現実は、自然科学と平和が対象のはずの賞を「拡張」させた。大恐慌、世界大戦、東西対立、欧州統一、共通通貨……。多くの知性が熱い議論を交わし、相対立する政策が提起される。受賞を後悔したミュルダール、デモ隊に乱入されたフリードマン、投機に足をすくわれたマートンとショールズ……彼らは何を語り、何を見ようとしなかったのか。半世紀近くにわたる歴史を一気にたどり、将来を展望する。
ノーベルの遺言にはなかった経済学賞は、1969年に新設され、50年の歴史があります(他の賞は1901年創設)。英語では、The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel、つまり「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」が正式名称となります。他の賞に倣って、スウェーデンの王立科学アカデミーが受賞者の選考に当たっているので、「ノーベル経済学賞」に見えるが、ノーベル財団は、経済学賞の選考プロセスの中で、Not a Nobel Prizeという項目を立てて注意を喚起しているのです。また、ノーベル経済学賞が、左翼系の経済学者たちを排除しているという意味で「偏向」しているという批判もあります。
とはいえ、経済学賞の創設からほぼ半世紀、経済学は科学としても発展してきました。例えば、「期待」をどう経済モデルに組み込むべきか?、「合理的経済人」モデルから「限定合理性」へ、ゲーム理論による数学的分析の精緻化などです。90年代から現在にいたるまで、ノーベル経済学賞はその範囲を広げ、心理学、社会学など周辺領域の優れた研究にも与えられるようになり、総合的人間科学が対象となってきました。
本書では、半世紀に亘るノーベル経済学賞の歴史を振り返ることで、現代経済学のエッセンスをわかりやすく紹介します。
目次
- はしがき
- 第一章 百家争鳴のパイオニアたち 1969-1979
- 1 もっとも幸福な時代
- 2 発展の礎
- 3 観察ツールの確立
- 4 思想への影響
- 第二章 ケインジアンと自由市場主義者 1980-1989
- 1 大恐慌時代に育って
- 2 ケインジアンたち
- 3 自由市場主義者
- 4 アレとドブリュー
- 第三章 「非―経済学」の包摂 1990-1999
- 1 新しい分野への評価
- 2 金融工学の誕生
- 3 制度の経済学
- 4 孤高の人=セン
- 5 ゲーム理論
- 6 新古典派経済学の精緻化
- 7 ユーロの理論的基礎
- 第四章 「社会科学」への拡大 2000-現在
- 1 予測市場とダークホースの時代
- 2 データ分析の発展
- 3 「市場」も「計画」も相対化
- 4 人はなぜ「協力」するのか
- 5 思考実験としての経済学
- あとがき
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