内容紹介
日本を代表すると言っても過言ではない12名の哲学者たちが、一般の聴衆を前に「現代日本の危機」を提示し、その打開策を探る「哲学からの挑戦」の試み。2014年から2015年にかけて行われ、大きな反響を呼んだ連続講義を基に、熱のこもった会場の模様を完全再現する。ライヴ感あふれる口語体で「知」「ことば」「いのち」「戦争」という「四つの危機」を取り上げ、立ち向かおうとした哲学者たちによる真剣な格闘の記録。
本書は、2014年9月から2015年1月にかけて高千穂大学で行われた連続講義を基にしたものである。日本を代表すると言っても過言ではない12名の哲学者たちが、一般の聴衆を前に「現代日本の危機」を提示し、その打開策を探る「哲学からの挑戦」の試みは、大きな反響を呼んだ。本書は、熱のこもった会場の模様を再現することを目指し、ライヴ感あふれる口語体による連続講義として編まれる。編集には、現在注目を集めている気鋭の哲学者があたった。
「実学優先」が叫ばれ、「哲学や人文学など不要だ」という暴論まで平気で口にされる現状の中で、「知」の拠点であるはずの大学は、まさしく存亡の危機にある。また、インターネットをはじめとする情報通信技術の発展によって、グローバルな規模でのコミュニケーションは確かに加速したが、逆説的にも、それに比例して「ことば」はただの消費材と化し、思慮ある議論の場は急速に失われつつある。そうして、一見、高度に成熟したように見える社会の背後では、人が生まれて死ぬという「いのち」の事実に対する感性は鈍くなり、世界各地でテロをはじめとする、従来の観念では捉えきれない「戦争」の現実味がかつてなく高まっていることは言うまでもない。
本書は、ここに掲げられた「知」、「ことば」、「いのち」、「戦争」という「四つの危機」を正面から取り上げ、立ち向かおうとした哲学者たちによる真剣な格闘の記録である。歴史を振り返れば、哲学はいつも時代の危機と闘う役割を担ってきた。哲学によってしか打破できない危機があり、哲学によってしか切り拓かれない未来がある。その未来の姿は、本書の中で生きた言葉を通して指し示されている。
目次
- はじめに(齋藤元紀)
- 第I部 知の危機
- 第1講 日本の近代化と啓蒙の意義と課題(牧野英二(法政大学教授))
- 第2講 現代における心の危機と哲学(信原幸弘(東京大学教授))
- 第3講 大学の危機と哲学の問い(西山雄二(首都大学東京准教授))
- 第II部 ことばの危機
- 第4講 対話としての哲学の射程(梶谷真司(東京大学教授))
- 第5講 民主主義の危機と哲学的対話の試み(小野原雅夫(福島大学教授))
- 第6講 言葉が開く宇宙─―『おくのほそ道』に学ぶ(魚住孝至(放送大学教授))
- 第III部 いのちの危機
- 第7講 危機の/と固有性、あるいは危機の形而上学(斎藤慶典(慶應義塾大学教授))
- 第8講 「世界の終わり」と世代の問題(森 一郎(東北大学教授))
- 第9講 危機の時代とハイデガー(高田珠樹(大阪大学教授))
- 第IV部 戦争の危機
- 第10講 戦争と戦争のあいだ(澤田 直(立教大学教授))
- 第11講 〈アウシュヴィッツ以後〉の哲学(宮崎裕助(新潟大学准教授))
- 第12講 はじまりについて(矢野久美子(フェリス女学院大学教授))
- おわりに(齋藤元紀)
製品情報
製品名 | 連続講義 現代日本の四つの危機 哲学からの挑戦 |
---|---|
著者名 | 編:齋藤 元紀 |
発売日 | 2015年08月11日 |
価格 | 定価 : 本体1,800円(税別) |
ISBN | 978-4-06-258608-5 |
通巻番号 | 605 |
判型 | 四六 |
ページ数 | 352ページ |
シリーズ | 講談社選書メチエ |
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