14世紀のモンゴル帝国解体後から、東アジアに近世の国家体制が誕生する17世紀までのシナ海域に、生まれては消えた「海上王国」の歴史。日本でも中国でもない、この「蜃気楼王国」に生きた人々――「日本国王」足利義満、鄭和の南海遠征、王直と倭寇、キリシタン小西行長と朝鮮出兵などをめぐる史料を分析し、海上政権との抗争のなかから、近代につながる近世の「陸の国家」が生まれてくる過程を追う。海からみた新しい世界史。
尖閣諸島や南沙諸島をめぐって緊張が高まるシナ海域。かつてこの海には、〈日本〉でも〈中国〉でもない「蜃気楼の王国」が存在していた――。
世界史的視野とフィールドワークで、東アジア史研究に独自の成果をあげている気鋭の著者が書き下ろす、14-17世紀の海域アジア史。歴史を海から大胆に組み替える意欲作!
■アジアの海に痕跡だけを残して、歴史の舞台から消え去った〈王国〉の300年史!
本書の舞台は、チャイナ・シーズ(China seas)、すなわち東シナ海と南シナ海を中心とする中世の「海」です。堺から瀬戸内海を経て、長崎・平戸、朝鮮半島と中国沿岸部、さらに台湾からフィリピン、ジャカルタにまでいたる海を、あえて出身国でいえば、中国人、日本人、琉球人、ポルトガル人、ヴェトナム人…といった人々が、ジャンク(中国船)やガレオン船で自在に行き交った時代。彼ら「海域王国の住人」は、いかに生き、なぜ消えていったのでしょうか。
■日本国王・源義満とは誰か? 「海上政権」を夢みて闘った英雄たちの列伝。
歴史学の主流では、長く「英雄史観」は否定されてきました。しかし、本書ではあえて、未来へのヴィジョンを持ち、周囲を動かしてきた人物=英雄を取り上げます。明朝皇帝と巧みに交渉した足利義満、南海遠征を率いた宦官の鄭和、「倭寇の頭目」と呼ばれた王直、キリシタン大名・小西行長、清朝やオランダと戦った国姓爺こと鄭成功――。海の歴史を動かしてきた彼ら「英雄」を歴史学として客観的に分析する方法を提起し、その数奇なドラマを描きます。
■アジアの近世は海から始まった。〈世界史〉と〈国家〉をシナ海域から見直す!
しかし本書は、シナ海域という限られたエリアのローカルな歴史書ではありません。チンギス=ハンに始まるモンゴル帝国を契機に生まれた〈蜃気楼王国〉。この「海の政権」との長い抗争を経て、東アジアの陸地に生まれた近世国家が互いに交わした黙契とは。ヨーロッパ近代国家との比較も交えて、新たな「海から見た世界史」を提唱します。
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