日本の外交官と外務省の隅々までを知り尽くす佐藤優が、これまでに接した当事者のなかで能力、実績、人格ともに最高に評価するのが吉野文六氏。95歳。
吉野氏は、沖縄返還において日米両政府間に密約が存在したことを、2006年に日本側の交渉当時者として初めて明らかにした。アメリカ局長、外務審議官、旧西ドイツ大使などを歴任した外交官の「職業的良心」はいかに生まれ、形成されていったのか。
旧制高校時代に身に叩き込んだ英米系哲学、帝国大学での学生記者経験、高等文官試験を行政科・司法科・外交科すべて合格し、外務省へ入省。真珠湾攻撃前夜の太平洋を横断、たどりついた北米大陸での見聞、動乱の欧州を視察してベルリンへ。、松岡洋右外相、野村吉三郎駐米特命全権大使らのエピソードや、各在外公館でおこなわれていた諜報活動、またソ連のドイツ侵攻時に、在ベルリン大使館から南方へ避難した大島浩大使からの下された決死の司令。1945年5月ナチス・ドイツ第三帝国が崩壊する瞬間に立ち会う。そして命を賭してシベリア鉄道横断からの帰国。
1941年から1945年にかけた激動の欧州を青年外交官はどのようにとらえたのか。本書は、若き外交官の真実のビルドゥンクス・ロマンである。
太平洋を渡り、アメリカ経由でのドイツ赴任行のとき、ドイツ語でつけた日記が、近年、奇跡的にビュルツブルグ大学図書館で発見された。その全文も併せて収録する。吉野文六と佐藤優が語り合う新感覚のオーラル・ヒストリー・ノンフィクション!
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