村上龍『69』以後、’70年代のほろ苦い青春を描く。
基地の街から出てきた東京は、ひどく退屈で、やるべきことは何も見つからなかった。麻薬とセックスと音楽に明け暮れた日々の中で、映画は強烈な魅力にあふれていた――。
20年振りに、ロサンゼルスで、ヨウコと再会した。センチュリー・シティにあるホテルのバーに現れたヨウコは、相変わらず痩せていて、化粧気がなく、ゆったりとしたニットのワンピースがよく似合っていた。わたし達は、バーが閉店するまでいろいろなことを話した。あんなにたくさんセックスしたのはあの時だけだったわよ、と7杯目のコニャックを飲んだ後でヨウコはそう言った。ボクも同じだ、と言うと、嘘つきなのは変わってないわね、とほとんど皺のないきれいな顔でヨウコは、楽しそうに笑った。
+ もっとみる