織田信長若き日の苦悩と知られざる愛
神も信ぜず、仏も信じぬ彼はおのれ自身のほか 何も信じない。その上――彼は人間の心の醜悪さを戦国の世で嫌というほど見てきた。領地にためならば骨肉の情などかなぐり捨てて父を追い 子を殺し、兄弟を裏切る世のなかである。これらの人間を制圧するには力以外に何ものもない。だから、もし、2つの戦い――義元や義竜に勝つことができるならば 力をもってすべてを制圧せねばならぬ。信長は眼をつむっている。すべての執着をたち切れと禅は教えている。死を恐れるすべての執着を棄てることである。死を賭けて義元や義竜の大軍に切りこむ、死中に活を求める――そのほかに道は残されていないのだ。
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