精神と肉体、文学と行動、その根源的一致を幻視する
告白と批評の中間形態、秘められた批評と著者自らが言い、文学と行動、精神と肉体との根源的な一致を幻視し、来たるべき死を強く予感させる、最後の自伝的長篇評論「太陽と鉄」を中心に、30歳の頃の旺盛な創作活動の根柢を明かす「小説家の休暇」等、稀有なる文学者の思索の結晶体ともいえる12篇を収録。三島文学の全体像とそのデモーニッシュな魅力をあますところなく示す全3巻論集。
三島由紀夫
このごろ私は、どうしても小説という客観的芸術ジャンルでは表現しにくいもののもろもろの堆積を、自分のうちに感じてきはじめた(略)そこで私はこのような表白に適したジャンルを模索し、告白と批評との中間形態、いわば「秘められた批評」とでもいうべき、微妙なあいまいな領域を発見したのである。それは告白の夜と批評の昼との堺の黄昏の領域であり、語源どおり「誰そ彼」の領域であるだろう。――<「太陽と鉄」より>
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