本郷菊富士ホテルの出逢いで始まったX子との関係は、泥沼のような生活を強いた。真杉静枝の誘いで出かけた、脱出にも似た台湾旅行から起こす下巻は、敗戦の日、8月15日の感情で終る。戦時下の暗鬱と苦悩のなか、志賀直哉、青野季吉、中野重治らとの交流を通じ、みずからの辛い日常、作家たちの風貌を鮮明に描く、自伝的文壇回想記。野間文芸賞受賞『年月のあしおと』の続篇。上下2巻完結。
年月のあしおと