『漱石とアーサー王傳説』は、「『薤露行』の比較文学的研究」という副題を持っている。直接ここで問題とされているのは、短篇『薤露行』である。この小品の意味を解き明かそうとする江藤氏の分析力はきわめて鋭利で、漱石の内部の最も根源的な部分にまで達しているため、それは漱石の全作品につながる。そしてさらには、漱石の人間の本質にまで迫る重要な問題を孕んでいるのである。(「解説」より)