本書は、久しく法隆寺の再建・非再建をめぐって謎とされてきた諸問題を、文献批判と美術史家の立場から物のかたちを通して克明に論証したものである。たとえば、法隆寺建築の細部に初唐様式の影響が見られる点まぎれもない白鳳様式であること、法隆寺金堂再建のさい玉虫厨子の建築的意匠が模倣されたことなどを指摘し、あわせて太子の釈迦信仰の姿をさぐる。著書の『斑鳩の白い道のうえに』とならぶ、名著と評価の高い聖徳太子論。