一見とるに足らぬような民間の俗信の断片にも人類文化史の主要な一節をたどる糸口の秘められていることを学問的に確信する著者は、わが国の桃太郎や一寸法師の昔ばなしの中に見られる〈水辺の小サ子〉の背後にひそむ母性像の源流を原始大母神と子神にまで遡及させる。その他併録の「月と不死」「隠された太陽」「桑原考」「天馬の道」「穀母と穀神」等いずれも、日本民俗学と比較民俗学とを結合させて画期的考察を加えた畢生の名著。