本書は、夏目漱石が明治40年と41年に行なった2つの講演、「文芸の哲学的基礎」と「創作家の態度」を収める。いずれも有名な『文学論』の、いわば序論とも各論とも考えられる講演で、文学の理論と歴史を哲学的に、心理学的に根本から究明している。特に真・善・美・壮の文学の4種の理想を論じつつ、4者の価値が平等であることを強調し、真のみを重視する自然主義の文学を批判する。漱石文学理解の要ともいえる重要な講演集である。