「利によって行えば怨み多し」、また「富と貴とはこれ人の欲する所なり。されどその道を以てせざれば、これを得るもおらず」(ともに里仁篇)の2句は、著者の実業遂行上の信念である。このように経済活動の正当の道によるべきことを繰り返し主張してやまない著者は、「論語と算盤(そろばん)」説なる独特の道徳=経済一体論を展開し、「論語」を、実業あるいは日常生活に身を処する規範を説いた実学の書として、現代に生き生きと甦えらせるのである。