言語の基本は話し言葉であって、書き言葉はその写しないしは延長にすぎない。しかし、戦前の国語教育は、読み書き習字を中心としており、話し言葉の教育は顧みられることもなかった。この話し言葉に初めてアカデミズムの光を当てた本書は、一方では難解とされるソシュールやイェスペルゼンの言語理論に導かれつつ、他方ではトンチ教室や漫才、落語といった学問の周縁部分(マージナリア)の援用によって目のさめるような新しい日本語学を展開する。