レトリックを駆使して、政敵を論破し、政策を訴え、窮地を切りぬける大統領。時に「ほめて殺し」、時に「攻めて守る」説得戦略のすべて。
レトリック的大統領制──レトリック学者のジェームズ・シーザーは、「かつては大統領は大衆レトリックをめったに使わなかったが、現在では大統領が国家を統治する主要な手段の1つとして機能している」と明言する。このような背景から、「語ることは統治なり」(speaking is governing)という神話にも似た伝統が形成されてきた。(中略)大統領選挙運動(campaign)では候補者はレトリックを通して有権者に語りかけ、首尾よく当選して大統領に就任すれば、「何か語らねば」というプレッシャーにさいなまれ、現実のというより、想像上、知覚上の「危機」について語り、大衆のムード、感情に訴えかける。現実には国家危機はないのに、ことばレトリックを通して大統領がいかにも重大な危機が存在するかのように国民の知覚を操作することも可能になる。実際、大統領が軍隊を派兵する決定を正当化しようとする戦争レトリックには、危機の「創出」と「管理」の手法が見え隠れしている。──本書より
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