忘れられない本がある。生きる励ましとなり、心の支えともなる本がある。自分にとって本当に必要な本といかにして出会うか。読書の醍醐味を語る。 「出会い」としての読書――人間は生きていく上でいつも順調にいくとは限らない。精神的にも、肉体的にも、あるいは家庭や、勤務先での立場や、どんなところで物事がうまくいかず、いつ生が危殆に瀕するかもしれない。ぼくの経験を言えば、そういう時に最も力になってぼくを救う役目を果たしてくれたのは、家族や友人や同僚ではなく、何よりもまず書物であった。だからここではぼくが生涯に何度か陥った危機のとき、あたかも救済者の如く現れ、ぼくを力づけてくれた本のことを語ろうと思う。人は自分がそれをそれと知らずに欲していたとき、まさにそこに現れるべき本に出会うことがあるものだ。――本書より