なぜ日本の医者は権威主義的か? 患者数が増え続ける理由は? 日本の医者の源を追いつつ医者養成システムをつぶさに検討し、現代医療の構造的問題に迫る。
人体解剖実習――学生たちは最初、一般的な注意があたえられた後、実習室に入る。防腐剤にまじって異様な臭いが漂っている。ずらりと並んだ解剖台の上に、シーツでおおわれた死体がそれぞれ横たえられている。一台に5人ないし6人の学生が配される。シーツを取ると、固く冷たくなった裸の身体が目にとびこんでくる。おもわず目をそらして、自分が担当させられている、手や足に目を移す。学生はそれぞれ右手、左手、右足、左足というように部分をわりあてられて、そこを解剖するのである。…… 最初の数日は、学生たちはすべてがはじめての体験ばかりで、混乱する。夕食をとるにも、食欲がなくなっている。肉などが視野にはいると、吐き気を覚えるという学生もいる。「なんでこんな実習をしなければならないのですか」と泣きながら先輩に訴える女子学生もいる。――本書より
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