イラン革命、湾岸戦争、ユーゴ紛争、原理主義……。イスラームにいま何が起きているのか。西欧優位の時代が生んだ近代化改革と、イスラーム復興運動のあいだで苦悩する、イスラームの近・現代を描くシリーズ最終巻。
息を吹きかえすイスラーム――ホメイニーの登場とイラン革命の成就によって、前章までにおいて述べてきた、第一次世界大戦直後の時期にその輪郭がつくられた国民国家の体制は、くさびを打ちこまれた。このような社会変動は、イラン一国だけにとどまるものではない。ほかの地域でも同じように体制自体の動揺・破綻・崩壊がすすんでいる。それはトルコやアラブ諸地域においては、ナショナリズムにもとづく国民国家の体制のゆきづまりとしてあらわれ、中央アジアやザカフカスでは、社会主義体制からの訣別というかたちをとった。このような体制変革にエネルギーをあたえているのは、いうまでもなくイスラームであろう……。いまやイスラームは失地を回復し、新しい活力をえて復興しようとしている。ヨーロッパ的な政治・法・社会のシステムに毒され、妥協をくり返してきた従来の世俗主義・モダニズムの体制を見直し、根本原理にたち戻って変革していこうとする動きが出てきた。イスラーム復興運動、原理主義運動などとよばれるものがそれである。――本書より
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