古代日本最初の歌集に収められた4500首余りのなかから、現代詩人の心が選りすぐる秀歌の数々。巻一から巻四までの鑑賞と読解。
現代に生きる『万葉集』――『万葉集』が現在でも、古典としてのみならず、それほど努力しなくとも現代人が味わい、楽しむことのできる「生きた」歌集として私たちの前にあるということは、否定しよのない事実です。こういう古代詞華集の存在は、世界的にいってもきわめて稀れでしょう。たしかに日本よりもずっと古い時代から偉大な文明を花開かせた国々または民族はたくさんあります。しかし、それらの国々や民族の古代文化の産物である詩や散文のうち、現在でも「生きた」ものとして現代人に愛読されているものは、はたしてどれほどあるでしょうか。宗教分野での聖なる書物を除くと、その数は実に寥々たるものとなるに違いありません。――本書より
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