ユーラシアを覆う「イスラームの平和」が生み出した空前の大交易時代。オスマン帝国など強大な三帝国の下で、イスラームの繁栄は第2のピークを迎える。イスラームから世界史を読み直すシリーズ第2巻は拡大と成熟の時代を描く。
染付コレクションが語るもの――イスラーム世界は、7世紀後半における成立以来、一貫して旧世界の三大陸の陸と海の交通が輻輳するところでありつづけた。当時の世界各地を結ぶ交通ネットワークは、移動の文明であるイスラームの支配下にあった。つまり、イスラームの歴史そのものが、すべて「大交通時代」であったとさえいえよう……。こうしたイスラームの大交通時代の繁栄の一端は、イスタンブルのトプカプ宮殿にいまも残る、膨大な中国陶磁器コレクションにみることができる。宋の青磁と白磁、明の赤絵、そして世界最大の規模をほこる元の染付コレクション。こうした貴重な陶磁器は、「陶磁の道」を経て、ムスリムたちによってオスマン帝国へと運ばれたものであろう……。ヴァスコ・ダ・ガマのいわゆるインド洋航路「発見」も、大西洋から喜望峰を回ってインド洋への入口を発見しただけで、そこからの彼のインドへの道は、まさにムスリムのインド洋ネットワークに頼ってすすめられたのだった。――本書より
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