中国の厖大な富が、大奢侈となってふり注ぐ。後宮3000の美女、甍を競う巨大建築から、美食と奇食、大量殺人・麻薬の海、精神の蕩尽まで。3000年を彩る贅沢三昧オンパレードにもう1つの中国史を読む。
人乳で育てたブタがうまいか?――こうした文字通りの消費に血道をあげる傾向は、次の王済のエピソードにも如実にあらわれている。武帝(司馬炎)がある時王済の家に行幸したところ、王済はごちそうを出すのに、すべて瑠璃の器をつかい、100人余りの侍女はみなうす絹のズボンと上着を身につけ、飲食物を手で捧げもった。蒸したブタがこってりとうまく、ふつうの味とちがっていたので、武帝は不思議に思い、わけをたずねた。(王済は)答えていった。「人乳を飲ませております。」武帝ははなはだ穏やかならず、食事がまだ終わらないうちに立ち去った。……乾飯や蝋燭で炊いた飯や人乳を飲ませたブタが美味だとはとうてい考えられないけれども、このように高価な素材や珍奇な材料を、燃料、塗料、飼料などとして、目につかないところで消費することこそ贅沢の神髄だと、西晋貴族は考えたのだった。卑近なたとえをあげれば、本当のお洒落は洋服の裏地に凝る、といったところだろうか。――本書より
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