ユダヤ人死者600万をはじめとする、史上最悪の戦争犯罪はいかになされたか? 全世界からの囂々(ごうごう)たる非難の中、ドイツはいかに自らを裁いたか? 日本との比較は? 10万におよぶ容疑者の追及、時効の壁との闘い、民間追跡者の執念、「上官の命令」と良心の問題――など、法廷・議会で闘わされた激しい論争を通し、巨大な戦争犯罪とその裁きの全貌に迫る。
ドイツと日本の差――戦争犯罪の処理について、日本とドイツの違いは、すでに記述したように日本は連合軍による裁判ですべて終わり、ドイツはドイツ人自らも容疑者を裁いてきたことだ。曲折はあったが、ナチスが犯した過去の事実を改めて見つめ直し、論議をたたかわせ、深刻、重大な事態の認識を深めながら処罰、一方で被害を与えた諸国に謝罪し、償いをしてきたのである。……いつまでも過去の古傷にさわられるのは、当事者にとって重苦しく実につらいことである。また、法的、政治的責任を果たすのは問題処理の重要な方法である。しかし、それでもなお、正当な根拠をもち、戦禍の痛みがいやされない人々がいる限り、勇気をもって古傷にふれ、誠実な対応をすることは大切な道義だ。ナチス戦争裁判の法廷には、犯罪行為を裁きながら、人間社会の道義をわきまえたドイツの人々の苦悩と勇気と誠実さがあった。――本書より
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