宇宙はどのように始まり、この先どうなるのか。相対論の描く時空、素粒子論の語る宇宙創成、量子力学の説く「真空のゆらぎ」、ホーキングのいう「始めも終わりもない」とは? 宇宙論をやさしくじっくり解説。
宇宙は「真空のゆらぎ」か?――われわれは、古典的な厳密なエネルギーの保存則には、量子力学的な「抜け道」があることを知った。すなわち、ハイゼンベルクの不確定性原理は量子世界の現象に対して、きわめて短い時間内についてはエネルギーのゆらぎを認めるからである。たとえば先ほどの計算によれば、2×20×(-20)乗秒の間に限れば、陽子と反陽子のペアが仮の存在を許されるわけである。電子と反電子ならもっと長い時間存在できる。……真空はわれわれの常識では「何もない所」という意味だが、量子力学によってその概念は一変した。現代物理学においては、真空は決して「無」ではなく、仮想粒子とその反粒子が自発的な生成消滅を繰り返す激変の世界、まさにハルマゲドン(大決戦場)なのである。真空にこそ自然の謎が豊かに秘められている、といっても過言ではないほどである。――本書より
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