魂を揺すぶる指揮者。お気に入りのピアニスト。同じ曲が演奏家によって輝きを増す。ワルター、フルトヴェングラーからリリー・クラウス、チョン・キョンファまで深くゆたかな響きの世界へ極めつきの名演奏が誘う。
ブルーノ・ワルター――ブルーノ・ワルター。それは僕にとって特別な親しみに満ちた名前である。1951年から翌年にかけて、1年半におよぶ闘病生活をつづけた僕は、当時最も敬愛していた名指揮者ワルターにファン・レターを出したのだが、彼は日本の貧しい音楽家の卵のために、長いはげましの手紙とサイン入りのブロマイドを送ってくれたのである。それ以来、1962年にワルターが他界するまで文通をしたのだが、ルトルフ・シュタイナーの人智学、神智学に傾倒し、人智学会に入会していたワルターの霊的な温かさは、まことに類例のないものであった。――本書より
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