「例外的な人」exceptional personは、日本で「変人」、海を渡ると「偉人」。英語で話せば人が変わる……。日本とは大きく異なる英語の文化的背景と論理をさぐり、具体的な表現を通してその背後の考え方にせまる。
察しの文化と意志尊重の文化――日本のホテルで朝食をとる時、「和食でお願いします」と言うと、ほとんど決まりの日本食のセットがさっと出されてほかに言葉はいらない。ところが「洋食をお願いします」と言うと、まず「ジュースは何になさいますか」と聞かれ、「オレンジ」か「トマト」か、はたまた「グレープフルーツ」かを決めなければならない。次に「卵料理は?」と聞かれ、「スクランブル」か「目玉焼き」かその他の中から選ぶ必要がある。「ベーコン」か「ハム」かを選ばせるところもあり、さらに「パン」は「ロール」か「トースト」か、最後に「コーヒー」か「紅茶」かまで決めているとひどく時間がかかる。これはまさに欧米のホテルの朝食の注文と同じ光景である。日本的な沈黙と「察し」の文化と、個人の意志と言葉を尊重する欧米文化の際立った違いが端的に見られる場面である。――本書より
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