六道をさまよいながら永劫の転生を続ける人間。煩悩と苦しみに満ちた“迷いの世界”を脱けて、平安な“悟りの世界”にいかにして到達するか。古くて新しい仏教思想の核心を平明に解説する。 カバー絵「熊野観心十界図」(岡山・武久家蔵)解説――通常、地獄極楽図といわれるものの一つ。虹の架け橋様の半円弧は人生の坂道を表わし、人生の坂道を下り終えた人は、閻魔王の法廷で裁きを受ける。その下には、地獄・餓鬼・阿修羅の凄惨な世界が描かれる。画面のほぼ中央には、賽の河原に立って小児を導く地蔵がおり、その上方には、法会の卓と僧たちの姿、その右に、雲上の如来とそれを拝する僧、さらに卓の上方に、雲上の阿弥陀三尊や菩薩などが描かれている。